2009年度作品。アメリカ=ドイツ映画。
1944年6月、ドイツ占領下のフランス。映画館主のミミューはドイツ軍の英雄フレデリックに言い寄られ、挙げ句にナチスのプロパガンダ映画をプレミア上映させられることになった。その事実をつかんだイギリス軍はナチス諸共映画館を爆破すべくアルド中尉率いる“イングロリアス・バスターズ”を動員し、スパイのブリジッドと接触を図らせる。一方ナチスでは“ユダヤ・ハンター”の異名をとるランダ大佐が動き出し…。
監督は「パルプ・フィクション」のクエンティン・タランティーノ。
出演はブラッド・ピット、クリストフ・ヴァルツ ら。
タランティーノらしい作品だな、というのが見終わった後に感じたことだ。
感性やノリが常人とちょっと違っていて、ぶっとんでいるし、無駄に見えかねない会話には、独特のこだわりが感じられる(ように見える)。
そして露悪的だな、と感じるほどにグロテスクだ。
そのあまりの露悪さに、おもしろいのだけど、すなおに誉めていいのか幾分悩んでしまう。
正直困った作品だ。
ナチスを殺す映画ということもあって、さすがに殺戮シーンには力が入っている。
頭の皮をはぐ作業や、バットで敵の頭を砕くシーン、生きたまま額に傷をつけるなどはいかにも悪趣味だし、銃創に指をつっこむシーンなどは、見ているこっちが悲鳴を上げたくなるほど、痛々しい。
だがそれでも、そのシーンはまだまだかわいいものなのだ。
クライマックスの映画館のシーンになると、その露悪さは本当に際立ったものになってくるからだ。
実際、最後の映画館のシーンは見て、ひでえな、と思わずつぶやいてしまった。
それくらいあのシーンはえぐかったと僕は思う。
だけどタランティーノのおもしろいところは、あんな風に人をバンバン殺すシーンを撮っておきながら、感傷のかけらも、明確なテーマ性も持ち込んでいないところだろう。
普通の監督だったら、ああいうシーンを描くことで、戦争は愚かだ、とか、人が無残に殺される悲しみを、仄めかすように撮る場合が多い。
だけどタランティーノはただ人を殺して、それで終わらせている(ように見える)。
多分、こんな撮り方をする監督なんか、そうそういないんじゃないだろうか。
そういう点、その是非はともかくもインパクトは大だ。
それに悪趣味で、ひどい作品ではあるのだけど、単純におもしろい作品であることは確かなのだ。
復讐に向かうまでの過程はそれなりに盛り上がっているし、タランティーノ独特の会話の間には緊張感があって、ハラハラさせられ、いくつかのシーンは笑える。
それに、銃撃戦は充分な迫力があって見応えがあるのも良い(人間の尊厳はかけらも感じられないけど)。
趣味が悪い作品だという点はまちがいない。良い意味でも悪い意味でも、ひどい映画だ、と思う。
だがエンタテイメントとしては充分に楽しめるつくりになっていて、飽きることはない。
すなおに誉めきれないが、好きか嫌いかで言ったら、まちがいなく好きな映画だ。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
制作者・出演者の関連作品感想
・クエンティン・タランティーノ監督作
「デス・プルーフ in グラインドハウス」
「プラネット・テラー in グラインドハウス」
・ブラッド・ピット出演作
「オーシャンズ13」
「バベル」
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
「Mr.&Mrs.スミス」
・ダイアン・クルーガー出演作
「敬愛なるベートーヴェン」
「戦場のアリア」
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